世界一美しい散歩道ミルフォードトラックを歩いてきた
ミルフォードトラック(Milford Track)は、ニュージーランド南島のフィヨルドランド国立公園内にある全長53.5kmのトレッキングコースです。 「世界一美しい散歩道」と評される、氷河が削ったその急峻な大地はまさに絶景の一言です。
ミルフォードトラック
ミルフォードトラックは一日90名の入場制限がかかっており、一方通行で自由に歩くことはできません。事前に全ての山小屋を予約してから決められたコースを歩くことになります。このため非常に人気のあるコースですが、とても静かに歩くことができます。
このトレッキングに参加するにはUltimet Hikes社の実施するガイド付きウォーク(Guided Walk)に参加するか、公営の山小屋を手配して自分で歩く個人ウォーク(Individual Walk)とする方法があります。今回私は2017年11月25日から4泊5日のガイド付きウォークに参加しました。
1日目(クイーンズタウンからグレードハウス)
ミルフォードトラックの近くには大きな街がありませんので、拠点は少し離れたクイーンズタウンになります。クイーンズタウンは小さい町ですが、様々なアクティビティの拠点になっているため各種アウトドアショップが揃っており準備には最適な場所です。
ガイド付きウォークではクイーンズタウンからの送迎が付いており、まずはバスで5 時間ほどかけてテ・アナウまで移動します。
実はこのミルフォードトラック、高い山に阻まれ登山道にアクセスするのが容易ではありません。そのためテ・アナウダウンズという場所からまで行って、そこから船に乗って約1時間ほどテアナウ湖を横断します。
ちなみに扉峠(Door Pass)という場所を通って陸路でアクセスすることもできますが、かなりの上級者向けコースとなっています。
ここから約20分ほど歩くだけで最初の宿泊場所グレードハウスに到着です。
ガイド付きウォークと個人ウォークでは宿泊する場所が異なっており、ガイド付きウォークではUltimet Hikes社の所有するプライベートロッジに宿泊することができます。このプライベートロッジはフルコースの料理に、シャワー、強力な乾燥室、またプランによっては個室も選ぶことができます!
個人ウォークで宿泊する山小屋は自炊小屋で管理人はいますが、2段ベッドと自炊設備のみになります。個人ウォークの宿泊場所はガイドウォークのロッジのだいたい1時間先に設置されています。
ネイチャーウォーク
初日はそのままネイチャーウォークといってロッジ周辺をぐるりと回ってガイドの方が周辺の植生や、鳥について解説をしてくれます。
フィヨルドランド国立公園は非常に降水量が多い地域として知られています。屋久島の倍以上、年間8000mmも降る雨ばかりの土地です。 このような土地なので非常に美しい苔を見ることができます。
グレードハウス
プライベートロッジにはこのように広々としたロビーがあって、到着後くつろぐことができます。
ガイド付きツアー最大の魅力は食事かもしれません。
前菜、メイン、デザートのコースで提供されます。メインは毎日3種類の中から選ぶことができ、牛肉など、鶏肉または魚、ベジタリアンミールから選ぶことができます。
この日は鹿肉を選んでみました。
2日目(グレードハウスからポンポローナロッジ)
昼食作り
朝食の前にその日のお昼に食べるサンドイッチをみんなで作ります。 チョコレートやナッツ、バナナやリンゴなどのフルーツ類も持っていくことができるので行動食も準備不要です。
クリントン川
クリントン川沿いに進んでいきます。
2日目は16kmほど歩きますが、一番ラクな道のりです。 この写真のように道は非常によく整備されており、路肩や看板、小さい橋から大きい橋までまったく不備がありません。
ほぼ平坦な道のりなのでゆっくり歩くことができます。
ガイド付きウォークには最大50人参加することができ、ガイドが4人付きます。日本のようにまとまって1列に歩くわけではなく、先頭と最後に2人、真ん中に2人のガイドが列の中を行き来してくれ、参加者は自分のペースで自由に歩くことができます。 ガイドは4人中1人が日本人の方でした。
まったく迷う心配がない道で危険な場所もほとんどないためゆっくり楽しみながら歩くことができるのがこのコースの良いところです。
ニュージーランドといえばマヌカハニーを思いかべるかもしれません。マヌカの木はここミルフォードトラックにも自生しています。
ミルフォードトラックには倒木がたくさんあります。氷河削った土地は斜面が急すぎて土壌が薄く、ある程度大きくなった木々は倒れていってしまうそうです。 倒木には苔が生え、また新しい芽が出て育っていきます。
ミルフォードトラックはこのような谷を歩いて行くコースです。 周りの山は2000m程度の山が連なっていますが、1万年前まではここはすべて氷河の下でした。
長い年月をかけて氷河が海に流れていく過程で谷を2000m削り、今のような地形ができがったのです。 森を抜けると迫力満点の谷が迫ってくるようです。
スイミングプール
この日の最後の目玉はプレイリー湖です。Swimming Poolと名前がついており、泳げるとのことでしたが、この日は日中22度ほど。歩くには暑いのですが、キンキンに冷えており泳ぐには厳しい感じです。みんな靴を脱いで足湯のようにつかって涼んでいました。
バス停
この日宿泊地ポンポローナロッジまではもう少しなのですが、突然バス停が現れます。
実はこの先の川が、雨が降るとよく通れなくなるためここで雨宿りをするのです。 どうしても通れないほどに雨が降ってしまった場合はヘリコプター移動となってしまうこともあるそうです。
ポンポローナロッジ
実はこのロッジ、たくさんの特別があるんです。
100年前に建てられたときから受け継がれてきたオリジナルレシピのスコーンが出迎えてくれます。
夕食はココナッツカレーを選びました。
デザートはおいしそうなクリームブリュレでした。
とってもイタズラ好きなオウムのキアが遊びに来ます。 飾ってある登山靴はキア用のおもちゃで、夕食時になるとこのようによく遊びに来ます。好奇心が強く人が近寄っても逃げません。
また朝食は特別メニューとしてエッグベネディクトを注文することができます。
3日目(ポンポローナロッジからクィンティンロッジ)
3日目はこのミルフォードトラックの最高地点であるマッキノン峠を超える15kmの道で、峠越えになる一番きつい日になります。700m登って900mほど降りる計算になります。
飛べない鳥ウェカ
ニュージーランドはもともと哺乳類はコウモリの2種類しかおらず、蛇などもいない特殊な環境であったため鳥類が反映しました。天敵がいなかったためニュージーランドの国鳥であるキーウィー(Kiwi)やウェカ(Weka)などの飛べない鳥をたくさん見ることができます。
ここの鳥は警戒心というものがないのか、まったく逃げません。野鳥観察にはもってこいです。
マッキノン峠
ミルフォードトラックの最高点がこのマッキノン峠です。ここは1,140mしかないのですが、森林限界は7、800m程度にあり抜群に景色がいい場所になっています。ぜひ晴れてほしい場所です。
風景を撮っていたらキアが写りに来てくれました。
3日目のお昼はここで食べます。写真は世界一眺めのいいトイレ(笑)。
エマージェンシートラック
ミルフォードトラックは雪崩の名所です。氷河が削った急峻な大地はいたるところで雪崩を発生させます。コースがオープンするは11月からですが、12月の上旬ごろまでは雪崩発生があるため一部通れないコースが設定されることがあります。
エマージェンシートラックはいわゆる旧道というやつになっています。新道よりは短いのですがその分急になっており膝に注意です。
ところで参加者は日本からのツアーとあたってしまったようで半分以上日本人という構成になっていました。通常日本人は50人中1、2組とのことです。
新婚旅行で来ていたカップルが4組もいました。おすすめです。
サザーランド滝
クィンティンロッジに着いたら荷物をおろしてサザーランド滝を見に行きます。 クィンティンロッジの裏から道が続いています。
落差580mは世界第5位だそうで、ニュージーランドで最大の滝です。 この日は晴れ続きで水量が少なかったそうですが、それでも近づくとカメラを出せないくらいに浴びることができます。
クィンティンロッジ
ご飯を食べる場所。どこにもピアノが置いてあります。 本当にここは山小屋なんだろうか?
本日はステーキとなっております(ちょっとかたかった)。
ちなみにホットドリンクは飲み放題で、紅茶や緑茶、ミロ、コーヒー、エスプレッソが用意されています。 コーラやスプライトなどのコールドドリンクや、ワインやビールなどのアルコールは有料になっています。ワインは結構種類が豊富でそんなに高くありません。
4日目(クィンティンロッジからマイターピーク)
いよいよ歩行最終日。最終日はなんと21kmも歩きますが、ほとんど平坦なので心配はいりません。
深い森、深い谷、交互に色んな表情を見せてくれます。 ここで子連れのウェカを見つけました。
ここは南半球。紫外線には注意です。
お昼ポイントのジャイアントゲート滝。 あまりにも気持ちが良いので長居をしてしまいます。
残り1マイルの標識が見えてきました。だんだん名残惜しくなってきてのでちょいちょい寄り道をします。
終点サンドフライポイントです。ここまでで33.5マイル、35.5km完走です。
サンドフライとはアブの1種なのですが、ミルフォードトラックにはこのサンドフライがものすごい数飛んでおり、噛まれたときの被害は甚大です。マオリの伝説にはあまりにもすばらしいこの地に人が長居しないように神が作ったとあるそうです。
サンドフライポイントで船に乗って最後の宿泊地マイターピークロッジへ向かいます。
マイターピークロッジ
最後はミルフォードサウンド内唯一の宿泊施設マイターピークロッジへ向かいます。 マイターピークロッジはこのツアー専用のプライベートロッジになっており、ガイド付きウォークに参加しないと泊まることができません。ミルフォードサウンドは非常に有名な観光地で観光客も多数訪れるのですが、この景色を見ながら泊まれるのはここが唯一の特別なロッジなのです。
この景色最高です。
最終日はラム肉。とっても柔らかくおいしかったです。
5日目(マイターピークからクイーンズタウン)
ミルフォードサウンド クルージング
最終日のトレッキングはありません。ミルフォードサウンドで2時間ほどのクルージングがツアーに含まれています。
ここミルフォードサウンドは野生のペンギンや、アザラシなどを間近に見ることが非常に貴重な場所です。望遠レンズを持っていけばよかった。
できるならもっと歩いていたい、すばらしいトレッキングになりました。